海の近くでの仕事と言っても
住んでいるのも海の近く
仕事に行くのも海沿いを延々と行くという
海とは離れられない生活
転勤で海の近くの分院に行く事になった
いくつかのトンネルを通ってそれ以外は海のそばの道をただ走る
トンネルの一つはちょうど工事をしていて
目の前で赤信号がついて停止したら
15分間待たなくてはならない
その15分間は慌ただしかった朝には貴重な時間
車の外に出て体操をしたり
朝食のおにぎりを食べたりと有意義に過ごした
そうやって到着する仕事場は病院の分院でクリニック
外来の仕事を済ませた午後は訪問看護だ
訪問と言っても以前からのお付き合いで気心が知れている
玄関に行って誰もいない時は
家の裏に回ると少し腰の曲がったおばあちゃまが
魚を干している
「あれあれあれ~中さ入ってたら良かったのに」
そう言われてもね留守の家に入れない
厳密には寝たきりのおじいちゃまがいるから
留守宅ではないのだけど
血圧を測ったりしているとストーブの上に載った魚から
香ばしい匂いが漂ってくる
これは醤油に浸けたほっけかな?
「ね~さんこれから泊りけ!?」
そうだと答えると新聞紙を半分に割いて
焼けたばかりの魚をそれは手際よく包んでくれる
基本は頂き物をしてはいけない事になっているけど
新聞の上からも熱いくらいのさかな
これは断れない
なにせその日の朝からあしかけ3日の仕事
食事が届くとは言え飽きてしまう
なので魚は大歓迎だ
焼いた魚を新聞紙にのせて食べるのは不思議と美味しく感じる
寝ている方の事じゃなくて近況や昔話を30分位聞く
寝ているおじいちゃまはニコニコしている
ようやく家を出る
クリニックに戻ると数人の人がリハビリをしている
ちょうどいいころ合いに温めたパラフィンに手をつけて
引き上げている
試しにやってみたけど手がポカポカしていい感じだった
(顔にパックしたらいいかもと思ったりする)
長年の林業で使った機械のせいで
両手の指が白くなったためのリハビリで効果のほどは不明
挨拶をすると
「〇〇さん今日は泊りか?タコ喰うか?」
別の1人が
「こいつのウチ 窓から釣りできるんだ」
え~?いくら海辺でもそれはないだろう
と思っていたら
そのあとはタコが届いた
それもまるまるひとつ
ゆであがりで20センチ強ののタコだった
小さいクリニックだけど夜間の救急受け入れもしていたから
忙しい時は忙しいけど…何もない時は何もない
自分以外は無人の建物で夜間一人はちょっと怖い時もある
けど病院なんてそんなものだって思うと気にもならない
気にしていたら仕事にならない
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