アナタ二サマ

港町の小樽

空気も凍るような冬の夜に

両手で大切そうに抱えた本を「アナタニ」と差し出す

そんな妖精のアナタニサマ

小樽の新しい都市伝説になりつつある

これは小説の中に出て来る架空のキャラクターで

札幌在住の美術家である小磯氏が2023年に

文芸誌に発表した小樽舞台の短編に登場した妖精だ

1メートルほどの背丈に丸い目で全身毛むくじゃら

短い手足で真冬の寒い夜に現れる

短い手には本を持っていて

「アナタ二」と一冊の本を差し出してくる

その本を読むと面白さのあまり読みふけってしまい

そのまま凍〇するという

本はどれほど大切なのか両手で大事に抱えている

こうやって都市伝説が生まれて語られて行くのだろう

あと数年もすると伝説として定着していくのかなと思うと

何か楽しい気分になって来る

けど人の歩いていない冬の夜

家に急いで歩いている時にいくら可愛いとは言っても

そんな妖精が出てきたら…

やっぱりちょっと遠慮したいきもちと

会ってみたい気持ちとが半々だ

何よりも読みだしたら止まらないという本に心が引かれる

若い時から妖精とか妖怪なんかに夢を見出している

『フェアリー』とか『ノーム』って言う本を買ったのも

その頃だ

北海道には昔からアイヌの人たちが住んでいて

『蕗の下の神様』コロポックルの話しが有名だ

蕗の下に立てるほどの小さい神様と言う事だ

ずっと昔の北海道には本当にそんな神様が住んでいたのだろうか

神様って言うより妖精だったのかも

なんて考えるとワクワクしてくる

伝説になりつつあるアナタニサマ

日本の妖怪の『豆腐小僧』を思い出してしまった

豆腐小僧って言うくらいだから小さい男の子が

両手で豆腐を持っていてそれを差し出してくれるんだって

自己紹介もちゃんとするようだ

「私は豆腐小僧と申します」って

アナタニサマも自己紹介をしてくれるかもしれないね 

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