ツニちゃんのリュックサック

「あのね~防空頭巾でも良いんだって」

「みんなの分、作ろうかな」

ツニちゃんは私の母の事で、孫が母を呼ぶ時の名前だ。

地震で避難した後になって、思い出したように母が言い出した。

あったらヘルメットが良いんでしょう?というと、あれは大きいから

頭から脱げるし邪魔だからという事だった。

朝から寝るまでテレビを見ている母は、ニュースを見てはわたしに説明

してくれるけど、繰り返されるニュースには不安になって来るみたい。

買い物に行くたびにマスクを箱で買いだしたのもこの頃だったと思う。

今の感染症が出てからの話じゃなくて、ずっと前の事。

以前からマスクはして貰っていたけど、自分からするようになっていた。

高齢の母がウイルスに感染するのを防ごうと、持ち込まない事を念頭に

マスクを置いていたものだから、母も外に出るときは必ずマスクをして

いた。

夏でもマスクをしていたのは感心する。

暑くないのか聞いたら、「あったかいし、慣れたから」だって。

持ち込まない事へ私が実際にした事は、上がりかまちでソックスを履き

かえてから家に上がりまっすぐにお風呂場にいって入浴、上がったら

ソックスは別の物に履き替える事。

医療関係だと、どんなウイルスにさらされているか分からないから、母

の家に入るときはこんな注意をしていた。

母も頑張ってマスクと手洗いをしていたせいか、受診で何時間も病院の

待合室にいて、通院にはバスを使っていたけど感染症にはかからなかった。

そんな母がいつも持って歩いていたポシェットの中には、氷砂糖の袋と

保冷瓶に入った水、替えのマスク、お財布だった。

ある日「ねえ、買ったの。見てちょうだい」と、やけに嬉しそうに来た。

銀色の袋に黒字で『緊急避難袋』って書いてあった。

袋だけどリュックサックにもなるんだって、それは嬉しそうに話す。

中を見たら、軍手が10組、電池が単1から単3までで揃っているけど

それぞれが何パックも入っていて、その電池の重い事ったらない。

他にも、ホッカイロやマスクが箱ごと入っていた。

たくさん持っていたら、持っていない人に分けてあげられるからって

言うのが、たくさん持っていた理由。

けど他に何が入っていたのか忘れたけど、重いのなんのって、10K

以上はあったと思う。

そんな重さの物は母には背負えないだろうって、考えなくても分かる

けど、せっかく用意したのだから、本人には言わなくても良いだろう。

実際の所、非常時には短時間でおにぎりとお茶におやつまで持ち出し

た母だもの、持ち上げられないってパニックになる事もないだろう。

新聞なんかの広告で、緊急避難袋セットって言うのが売っているけど、

内容を見てもあまり心が動かない。

独り暮らし高齢者用とかってのを作ってくれたら良いんだけど。

高齢者の声を聴いてみてさ。

一人で留守番をしていた母の不安から思うと、明かりと暖かさと水の

3つは重要。

それに、色々と足していくと良いと思う。

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