ニセコ甘露の森

両親が存命の時に、2人を連れてニセコ甘露の森に行った。

私にとって、一番行きやすいのがニセコだから、行先はすぐに決定。

父は戦争に行った人だったから、たまに戦友会と言う集まりがあって

母にも一緒に行こうと誘っていた。

他の参加者はたいていが妻同伴だったからだ。

「じいさんばっかりの所に行って、何が面白いの」とはあまのじゃく

な母の返事で、内心は嬉しかったと思う。

と言う事で、父、母、私の3人でニセコへ行く事になった。

足が不自由な父がいるので、宿泊は当然のように和洋室の温泉付き。

ニセコまでは勝手知ったる道筋…と思ったが、最強の方向音痴を自負する

わたしやっぱり迷う。

ようやく着いてチェックイン。

「温泉のお湯が出ないので、お部屋を替えていただきたい…」と

フロントに言われ、せっかく予約したのにな~なんて思っていたら、

一つ上のランクの部屋を用意させていただきましたって。

いろんな所に泊まったけど、こういうラッキーな事は後にも先にも

この時だけ。

父は股関節と膝の手術をしているので、無理な足の動かし方をすると

関節が外れる恐れがあって、部屋は温泉付き。

いつもの事で、夜勤明けのわたしは着いたら仮眠をとるので、あまり

記憶に残っている事はない。

旅行に行っても仮眠ばっかりで記憶に残る事が少ないって、傍から見たら

寂しい限りなんだろうけど、いつもの事で私は気にしない。

お部屋はかなり広くて、ベッド2つがある部屋の他にこれまた広い畳の

和室がついていた。

なぜか他に泊り客がほとんどいない日だったようで、どこへ行っても

静かな館内だった。

夕食はレストランでの食事だった。

やっぱり他には泊り客がいなかったのか、時間が違っていたのか、レスト

ランはウチの家族の3人だけ。

前菜から始まって一皿づつ運ばれる形式。

窓に面した席に座った私たちの後ろには、3人くらいのウエイター?さん。

こういう状況には縁がないせいか、後ろから見られているようで背中がサワ

サワして落ち着かない事このうえなし。

『ホタテのカルパッチョ』(味の記憶からすると多分これ)

を食べ始めたところで「かあさん、わさびと醤油が良い」と母の言葉。

小さい声だったけど結構響く声。

「これもうまいぞ」と父のフォローにも母は関せず。

私は聞こえない風を装って食事を進めた。

和食って言っておくと良かったな、と気づいたけど後の祭り。

お料理全体は満足のいくものだった。

温泉旅館は和食が定番だけど、こういうのも良いななんて思った。

部屋に戻ると「かあさん、フルーツが食べたいから帳場さんに言って」

母は、フロントを帳場さんと言っていた。

すぐに電話をしたら、やっぱり今日は泊り客が少ないのでフルーツは2種類

くらいしかなく、オレンジとりんごだけとの事。

なにせメロンが好きな母の事である、メロンが食べたいと駄々をこねる。

もうなだめても無駄。

届けてもらっても、大した量は食べられないはずなんだけどね。

結局、ホテルの人が倶知安町まで買い出しに行ってくれてメロンが届いた

けど、やっぱり一切れ食べておなかがいっぱいと言う母。

仕方ないさ、胃が小さいんだものね。

なんだか疲れてしまった旅行だったけど、満足そうな両親を見て疲れも飛んだ

気分になった。

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