わがまま老人×3と丸駒温泉

父が亡くなったあと、母の弟と妹が家に滞在していた。

母が寂しがるので、函館から来てもらっていたのだ。

ある日「ねえ、厚岸に行こう」と唐突に言い出した。

唐突とは、私が思っただけで、3人で相談して決めた事のようだった。

?厚岸???なんで?

3人が言うには、厚岸…正確には「厚内に親戚がいるので会いに行こう

と思ってさ。」

親戚がいたの?厚岸に、と聞くと、

「いるのは聞いていたけど、会った事はないのさ。電話かけたら、遊びに

来て欲しいって」3人は、もう決まったかのようにキラキラした目で

私を見上げて言う。

その顔顔顔を見たら、行く事は確定のようだった。

話を聞くと、3人にとっての叔父がいるらしいが、年齢的な事なんかを

聞くと、聞くと聞くほどにわからなくなってきた。

昔の人は、かなりの年齢になっても子供を産むので、叔父と言っても3人

の年に近いそうで、養女に出したり養子に貰ったりで、親戚な事は間違い

ないが、私の頭の中は????????

行く気満々な3人を、愛車の軽4輪に乗せて釧路を目指すことにした。

軽4輪に大人4人、まして遠出となるとかなり窮屈。

札幌を通り、苫小牧を抜けて釧路、厚岸、厚内へ。

3人と同年代の叔父がが待っていてくれた。

私と同年代の女性が笑顔で迎えてくれたが、その女性は3人の従妹にあたる

らしい。

初めて親戚が来てくれたと、大喜びをしている叔父は近辺で漁師をしていた。

後継者がいない、誰か後を継いでくれたら、家も船も残してくれると

大きな笑い声を交えて、期待いっぱいの表情で話していた。

家の前には小さな川があり橋が架かっていた。

橋の名前は叔父の苗字だった。

サンルームのような場所に陣取り、今は4人となった年寄りの声をガラス戸を

隔てて聞いていた。

サンルームは家の後ろ側にあたるところで、深い山があり『トトロ』でも

住んでいるのではと思えるような大木が見えた。

やっぱり、年齢の事を考えると今一つどころか二つ三つ良く分からなかった

昔話に花を咲かせている4人は、叔父と姪と甥だったが、同じような年齢。

翌朝になって、叔父は塩鮭や野菜を車に積み込んだ。

朝早くに起きて、買い出しに行ったとの事。

車が小さいとからと遠慮する私に、

「持っていかないなら川に投げるからな」と。

名残惜しそうな4人を見て、もう少しいてあげたい気持ちだったが、そうも

行かない。

ようやく出発して走り出したところで、叔母が「友達の所に寄るわ、帯広!」

と、突然の行先変更。

プチプチ修学旅行の乗りで、どうにでもなれと帯広へ。

友達にも無事に会う事が出来たが、そこでもかぼちゃがいくつも積み込まれた。

運転席には置かないでね、危ないから。

その後、湖の近くのホテルに一泊してから札幌に向かった。

そのホテルでは、2部屋取ったが、私は1人でツインの洋室に泊まることに

なった。

部屋に入ろうとしたが、鍵が入らない、開かない、回らない!

フロントに電話してもなかなか来てくれない。

廊下で待っていたが、来ない。

通る人、通る人が、不思議そうに私を見て行く。

また電話して、夜は長いよいくらでも待ってやると思った頃に来てくれた。

半ばあきらめながら30分以上も待っただろうか。

こういう時の私は、すごく気が長い。

結局はカギが壊れていたとの事で、別の部屋に移してくれたが、

胡散臭い物でも見るような目で見られていたと思ったのは、私の僻み?

僻むこともないのだけどね。

と思ったところで気が付いたよ、足元を。

わたし、薄汚れたビーチサンダルを履いていたんだ。

足元を見るって本当だなんだなと、ちょっと思った。

どう見ても、ホテルに泊まるような身なりではなかったと思う。

けど、それが私のスタイル。

ましてや運転しっぱなしで来ているんだもの。

翌日になり、あちこちと見ながら一路札幌へ。

もう少しで支笏湖という所で、今度は「支笏湖、泊った事ない、泊りたい」

と3人が言い出した。

電話で予約したのは『丸駒温泉』

他に、もう一軒温泉があったが、丸駒の名前にひかれるようにして、予約。

4人OKとの事で一安心。

ここまで来たら、後は帰るだけだもの今夜はゆっくりしよう。

玄関を入ると、女将さんさんらしき方が「おかえりなさい」と笑顔で

迎えてくれた。(前日のホテルとは大違い)

食事は泊まる部屋の隣に用意されていたので、心置きなく4人で夕食を摂った。

今は、お食事処があって、そこでの食事になるようだ。

露天風呂で、手足をゆったりと伸ばした。

すぐ近くに湖があるようで、真っ暗い中に、波が寄せる音が心地よかった。

そこの露天風呂は、本当に湖のそばにあり、湖の水位で温泉の水位も変わるらしい。

首までお湯につかり、波の音を聞いていると眠ってしまいそうになった。

丸駒温泉は、紅鱒料理や炉端焼きがあるが、今年は紅鱒が不漁で早めの予約が

必要らしい。

何と言っても、湖の波音を聞きながらの露天風呂は、身体の疲れだけでなく

心の疲れも溶かしてくれるようで大満足だった。

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