ミステリードライブ

一昨年くらいまで、新聞の広告に『ミステリーツアー』募集の文字を見かけた。

旅行代理店の企画で、行先を告げられずにツアーに参加するようだ。

それでも、伏字以外の所から行先は何となくわかる。

いつも寝不足状態の私は、出発と到着しか覚えていないドライブや、何を

食べたか何をしていたのか分からない旅行がいくつかあるので、

あえてそういうものに参加しなくても、ミステリーと言えるだろう。

友人のご主人が、時々ドライブに誘ってくれた。

友人一家と私の家族、6人位だったか。

車が動き出してから、心地よい揺れが眠りを誘う。

どこを走っているのかは分からないが、車の揺れは大人のゆりかご。

とは言っても、シートを倒して寝ているものだから、時々は、ゴロっと

転がってどこかにぶつかっている。

私は眠る時、天井を向いて胸の上に手を組んで熟睡する。

おまけに、半分白目を開けているらしいので、知らない人が見たら

とんでもない事に、〇体を運んでいると思われるかも知れない。

もし途中で何かあって、車を停められても私は目を開けないだろう。

以前仕事帰りに乗ったバスが、軽い事故を起こして、全員が別のバスに

乗り換えた時、後部座席で寝ていた私は運転手さんの声で起こされた。

「大丈夫ですか?!大丈夫ですか?!」と慌てた運転手さんの声。

眠いのに何で起こすの、眠らせておいてよ。

眠っているのでこのままで良いです、動くまで待っていますから、と

行った私に、運転手さんは呆れたように、それでも安心したように、

少し尖った声で、バスを乗り換えて下さいと行って来た。

他の人が降りているのには気づいていたが、眠たかったのと、そのうちに

動くだろうと軽い気持ちでいたから、乗り換える気持ちはなかった。

こんな訳で、普段のミステリードライブは続く。

途中で『あげいも』を買ってきてくれたが、半分眠ったままで食べた。

そう言えば、車が停まった時に強い硫黄臭がしたような…。

それでも『あげいも』の味はしっかりと覚えている。

あげいもは、茹でたじゃがいもをホットケーキミックスでくるんで

油で揚げたもので、少しづつ名前を変えてあちこちで見かける。

夢うつつで芋を食べた後、また揺られながらのドライブが続き、

いつの間にか家についていた。

いつだったか、大沼公園のホテルに親戚一堂が会する機会があった。

座席が一人分足りなくなった。

どうせ寝ているからと、私の席は後ろの荷物置き場。

他の人に見られたら違反だからと、頭まで毛布をかぶせられて、

くれぐれも動かないようにと念を押された。

ちなみに、ペットのハムスターや犬には座席があった。

その時も、いつの間にか大沼に到着して、夕食に『鯉の洗い』を食べた

記憶があるが、後は、断片的な事だけで夢なのか現実だったのか

はいまだに分からない。

ミステリーどころか、ドリームツアーだったのだろうと思う。

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