かすべの煮つけ

母と二人で、函館からの夜行列車に乗って帰ってきた朝の事。

家に帰ったら、父が「まま作ってあるから」

『まま』とは『ご飯』のことで『まんま』とも言う。

『かすべの煮つけ』と、『油揚げと蕨の味噌汁』が作ってあった。

油揚げの味噌汁は父の好物で、かすべは私の好物だ。

どちらも美味しかった。

かすべには『真ますべ』と『水かすべ』があって、真かすべの方が断然

美味しいけど、切り身になってしまうと私には区別がつかない。

一度、水かすべを買ってきてしまい、煮つけにしたけど美味しくなくて

食べられなかった事があったので、それ以来作っていない。

だから、父が市場で見かけた時に買って来ては作ってくれる。

そう、かすべって言うのは『えい』の事で、北海道の形をえいに例える

事がある。

かすべはサメと同じようにアンモニア臭いと言う噂があるが、サメは分から

ないけどかすべにはアンモニア臭はない。

その種類によるのかも知れないけど、普段に食べていたかすべは、料理番組

で言うような魚の臭み消しのためのショウガも入れていない。

白身の魚だけど、身がしっとりしていてコラーゲンが豊富だ。

煮つけをそのまま置いておくだけで、汁がゼリー状にプルプルと固まる。

おしゃれにするには、身をほぐして汁と固めると煮凝りになるけど、私は

そのまま置いておく方が好きだ。

かすべは子供に食べさせるのに適していると思う。

白身だし、骨があるけど刺さるような骨ではなくて食べられる骨だからだ。

そんなわけで、子供に食べさせても危なくはない。

食べるとコリコリしている骨だが、大きい骨はわたしは食べない。

先に言ったように、料理番組では魚の煮物を作るときにショウガのスライス

や千切りを入れるようになっているが、我が家ではショウガは入れた事は

ない。

さばなんかは湯通しをしたりするけど、ショウガは入れない。

白身魚にショウガを入れると、ショウガの匂いに負けてしまうからだ。

以前、東京から母の弟一家が来たことがある。

千歳空港からレンタカーで来るとの事で、母は、家の前で前でずっと待って

いて、会えた時は大喜びをしていた。

従兄弟で長男にあたる子は来られなかったが、他の3人は来た。

叔父夫婦だけでは心配なので付き添いできたと言うが、従兄弟たちはわたし

にとって初対面だった。

北海道に来たら、まずはジンギスカンと新鮮な魚介類と言う事で、庭でBBQ

をすることになったが、叔母は羊肉も貝類も臭いから絶対に食べられないと

口にしなかった。

食事の後半に、子供たちと叔父に強く勧められて嫌々ながら口にしたところ、

美味しいと驚いていた。

羊肉はつけだれに工夫がしてあるからだろうけど、貝類は足が速いから本当に

新鮮でなければ食べられないだろう。

ちなみに、母の実家付近ではかすべは食べない。

言い伝えで、海に流された子供が大きなかすべの背中に乗って帰って来た

から、かすべは神様のお使いだと言って食べなかった。

けど、母はその言い伝えをよく私に聞かせてくれたけど、かすべが好きで

よく食べていたなあ…なんて思った事がある。

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