嘘みたいな本当の話

出血が止まらなくて困っているって電話で

よく話を聞いたら入院中の人からだった

夜間の救急で受付業務をしていた

重く渋くなる瞼を残り少ない意思の力で無理に押し上げ

電話の前で机におでこをぶつけそうになりながら

電話番をしていた時にかかってきた

「あの…鼻血が止まらない…です」

とりあえず家で出来る処置を説明した

「ずっと出ているんです」

消え入りそうな小声で訴えかける

とにかく鼻血が止まらない

すごく困っていると繰り返し訴える

こちらとしても困ってしまい

では…と

救急車を依頼してみてはと言ったけど

それは呼ぶことは出来ない

知られてしまうと困る?と

出血はずっと続いている

と言って救急車を呼ぶことも出来ない

今にも消え入りそうな声は出血のせいなのか

なにせ電話の向こうとこっち

状況がよく判らない

いくら救急車をと言ってもそれは出来ないと言う

一つしかない電話回線を塞いだまま繰り返す会話

「あの…入院しているんです…」

えっ?入院中?

なら話は簡単だ

入院先の人に言うと良い

けど周りに知られたくないとも言ってたな

周りの人って入院先の人の事?

説得してなんとか入院先の人に言う事となった

けど入院先に言えないってなんだろうね

夜は色々な電話がかかって来る

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