方向音痴でも山道では

春になると母から山菜採りに誘われる

夏も誘われる

秋になると雨降りの痕に誘われる

雨が降るとキノコが出るという

「山に行こう」簡単に誘われる

私の勤務をしっかりと把握しているようで

朝帰りの時は良く誘われる

夜勤明けの時は

すぐには仮眠しないのを知っているからだ

親切な事に

何か(なにかだ)の空き瓶にコーヒーを入れて

途中で眠くなった時の用心らしい

限界集落の我が地域は

ほんの少し車を走らせるともう山道に入る

「そこから右の方にはいって」

「左に行ったら真っすぐね」

(真っすぐって言っても道はないんだけど…)

「道あったんだよ前に」

「○○さん言ってた戦時中に通ったって」

(おいおいいつの事だよ)

そんな時に母は車から降りて

背丈近くに茂った草の根元を透かして眺める

「ほれあったよ」

車の轍がかすかに残っているらしい

一応私も見て見ると…微かに2本ある?

そんなところに入って石とか穴とかあったら

どうしよう

「車の前を歩くからついてきて」

そうして頭が見えるかどうかの所に入っていく母

見えるように片手を高く上げて振りながら

そんなところには突然現れる物がある

ガードレール

そんなのを見ると道路はあったんだろうね

そうやってしばらく走ると花畑に出る

昔花を育てていた所らしく

たくさんの花が一面に咲き乱れていた

そこを拠点に?山菜を採っていた

あの頃ってあの黒い大きな奴はいなかったんだろうか

母曰く

大きい奴もヘビも人間を怖がっているから

こっちから驚かさないと大丈夫だって言ってた

家の周りでヘビを目にしたのは数回

踏みそうになったところで上げた足を止めた

ヘビは何もなかったように目の前を横切って行った

うん

驚かさない限り大丈夫なのか

けど最近の黒い奴は人なれしているらしいから

気をつけないとね

そうやってずいぶんと山に入った

耳を澄ますと車が走る音が聞こえるけど

周りは山で何にもない

それでも道のないところをちゃんと戻って

迷わずに家に帰っている

方向どころか道がないからかえって迷わないのかも

ね…

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