どこにも掴まらなくても自分の足ですっと立てるって、嬉しいね。
毎日、何となく立ったり座ったり歩いたりしていたのに
掴まっても立てなくなるんだもの。
病気になって、始めて自分の身体を意識できるって本当だ。
足の小指なんて、普段は気にも留めないのに、忘れた頃にぶつけたり
するでしょ。
そこで自分の足に小指がついていた事に気が付くんだよね。
この1週間は辛かった。
病院に行こうにも痛くて立てないから、行けなかったでしょ。
雨だと道路が悪いし、片手に傘を持って歩くと危ないしね。
整形の先生に転んだことを言ったら、レントゲンを撮ってくれた。
血か水が溜まっていると思うって。
幸いにも、血はなくて水だけだった。
骨も問題なくて良かったよ。
この年で骨折なんかしたら寝たきりになってしまうものね。
痛み止めも注射してくれた。
前回もだけど、水を抜くとすぐに立てるようになるんだ。
それでも、しばらくは痛いんだ。
3~4時間すると、嘘のように痛みがなくなってる。
帰りはバスに乗ろうと思ってバス停に居たんだけど、思ったより
寒い日で、今にもみぞれが降るんじゃないかって寒さ。
タクシーにしようかって迷ったけど、もうバスの時間だったんだ。
そうしたら、目の前にタクシーが止まって、おじいちゃまが降りた
から、それに乗せてもらった。
車に乗って間もなく雨が降ってきたから、タイムリーで良かったよ。
母は毎月1回、通院してたし、父も通院してたけど、夏も冬もバスに
3~40分乗って通っていたんだ。
父は痛む足を引きずって、母はふらつく身体で。
母の貰う薬は量が多かったから、リュックサックを背負って行ってた。
薬局の人に勧められて、そこから宅配を利用できるようになった。
「かあさんが家に着くより早いんだよ」って喜んでいた。
どこの宅配サービスだったのかな。
母は、貧血がひどくなって、毎日の点滴の為に入院を勧められた事が
あったんだけど、もう入院は嫌だって断った。
それで毎日通う事になったけど、車で送ってあげられなくてごめん。
往復の福祉タクシーを予約して、それで通ってもらった。
それだと点滴が終わるまで待っていてくれるんだ。
点滴も、受付するとすぐにしてくれるから早く終わる。
そこの福祉タクシーは時間制だったから、時間が残ると
「何かする事ある?」って家の手伝いをしてくれた。
30代で、小さい介護施設を作りたいって、福祉の勉強をしながら
タクシーの仕事をしていた。
お金にあかせて、人任せにしてしまった事を申し訳ないと思ったけど、
その時は、仕事の関係でそれ以外の方法はなかったんだ。
父は戦争に行った人だったから、戦友会とかって言うのに参加していた。
遠方の時もあったけど、弟が送り迎えしていた。
帰ってきてから、「息子が送り迎えしてしてくれるってオレだけだ」って
喜んで話していた。
病気や外傷で、初めて自分の身体を再確認する事ができる。
親も同じだね。
いる時は当たり前に思っていても、いなくなって改めてその存在の大きさに
気づくよ。
あ~、もっと優しくすると良かった。
もっと孝行すると良かった。
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