我が家には、大型犬のセントバーナードがいた。
大型犬は優しくて甘えん坊。
娘が小学校低学年の時、我が家にセントバーナードがやってきた。
埼玉県のブリーダーさんから譲っていただいた。
大型犬とあって、ブリーダーさんからは、家族構成や家の状況、
主に犬の事を見る人、また、近所の散歩する場所など聞かれた。
そうして、ようやく迎えることが出来た。
弟と一緒に札幌の丘珠空港まで迎えに行き、我が家の愛犬となった。
名前は「ビル・オブ・ビッグレオ」Lサイズと言う訳ではないが、
呼び名は「エル」とした。
実は、亡くなった先住犬の名前で、この後も
我が家の犬はエルと呼ばれるようになる。
コロコロとしてぬいぐるみのような仔犬は、大げさに言えば
2頭身と思えるような体形で、走ると頭から前に転がって行った。
夜になると母の布団の足側から潜りこんで寝ていた。
1歳を過ぎた頃に、父が庭に大きな犬舎を建てた。
広さは3畳弱で、前方に長くひさしを付けた、小屋と言うよりは
離れの趣のある家で、真ん中で区切り敷き藁を敷き詰めた。
が、寂しいのか泣いてばかり居たため、父は犬舎に電気を引き
椅子を持ち込んで、そこで新聞を読みコーヒーを飲んでいた。
朝に夕に散歩に連れて行き、帰るとブラッシングをしていた。
父の可愛がりようは、ハーネスを馬具屋さんに特注するほど。
何重にも重ねた皮で、外側を皮でくるんだもので、
角がないので皮膚には良いとの事だった。
もちろん娘はじめ他の家族も可愛がり甘やかした。
寝ているところを見ると、頭にスズメが停まっており、
残ったご飯をスズメがついばんでいたりした。
ある日の事、犬舎の奥から微かにミャーミャーと声がする。
エルはと言えば、寝たまま頭だけをのそりと持ち上げ、
「あかんべー」をしたみたいな目で、面倒そうに私を見る。
恐る恐る犬舎を覗いたら、敷き藁の真ん中に動くものがある。
仔猫だった。
なにせ大きい犬だから…間違いでも起こして、どこかに
血の跡でも…と、犬舎の中に入った。
生まれて間がないような仔猫が3匹。
犬舎の中で出産した様子はなかった。
よそから運んできたのだろうが、母猫の姿はなかった。
この日から、エルの子育てが始まった。
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