ばんちゃんが歩けば食べ物にあたる

「おね~さん…」

「おね~さん…」

微かに声が聞こえるけど。

「おね~さ~ん…」

周りを見回しても人影はない。

当たり前だ、段々畑みたいになった墓地に居るのだから。

「おね~さん…」

頭の上から聞こえる。

ふと見上げると、上の方から覗いている顔があった。

ちょっと驚いた。

真っ昼間だからね、怖いものは出る訳はないけど

それでも驚いた。

だって2メートル位もあるがけの上からの顔だもの。

「おね~さん、ニラ食べるかい?」

  「え?はい、いただきます。」

ビニール袋にいっぱいのニラを貰った。

スーパーで買うニラとは別物だ。

香りも良いし、柔らかくてすごくおいしい。

お墓参りしたから、良い事があったのかな。

ちなみに、全く面識のない人。

これ、去年の事だったかな?

昨日は、散歩の途中で知らない人から大根を1本もらった。

暑くて、ふらふらと道を歩いていたら

大きな木の桶を覗き込みながら、中の水の表面を

撫でている人がいた。

私の好奇心が心の中から浮かんできた。

桶の中に何かの葉が浮いている。

蓮の葉みたいだけど小さいのね。

  「こんにちわ」

聞こえなかったみたい。

  「こんにちわ」

ようやく顔を上げてくれた。

  「花が咲くんですか?」

花を咲かせるには、水の中の根の方までお日様に

当てないとならないんだって。

それで、日が入るように葉を欠いているんだって。

今年初めてやってみたけど…等々を話してくれた。

私も今年初めて野イチゴを植えてみたって話したら

「ちょっと、見てくれない?」

家の裏側に案内された。

そこかしこにいろんな種類の草花が茂っている。

うらやましい…。

それぞれを説明してくれた。

一つは弱弱しかったから、家の中で大事に育てたら

「これ、こんなに元気になったの」

そんなこんなで、お暇する時を逃しながら

話しを聞いていた。

ようやく帰りの挨拶をしたら

「大根持って行かないかい?」

と言う事で大根を一本貰って帰った。

大根についても、農薬は使っていない事、

葉の穴はテントウムシに食べられた事なんかを話してくれた。

葉のきれいなところは漬物に

後は薄味で煮て夕食にした。

ひと月分くらい人の声を聴いた気分。

人と話をするのも何か良いもんだな。

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