蒸気機関車

何年か前に、我が家の近くを蒸気機関車が通っていた。

観光の為に1日に2回通過していた。

午前中に一回通って、夕方にその汽車の帰りに通っていた。

余市という果物で有名なところの駅では

鉄道マニアの人がカメラを構えていた。

けど、私は家の近くの駅からが一番だと思っている。

女の子だけど、上の孫がいわゆる『鉄子』で

機関車を見たがったんで時間を見ながら日に2回

近くの駅まで行っていた。

無人駅なんで、どこからでも構内に入れる。

もし、駅の切符売り(前はいた)のお姉さんがいても

特に注意はされなかっただろう。

跨線橋は木製でいつ出来た物か分からない位に味がある。

橋の上に上がって機関車が来るのを待っていた訳だけど、

はるか彼方から、走って来るのがよく見えた。

真っすぐの線路なんで、機関車の正面からの顔がよく見える。

自分たちの足の下を通り過ぎたら、すぐさま反対側に行って

機関車を見送る。

真っすぐの線路を走る機関車を、トンネルに入るまで

見送るのには十分な時間がある。

そう言えば、子供の頃には蒸気機関車だったけど

若かった母に、トンネルに入ったら窓を閉めるようにって

言われたっけ。

煤が汽車の中まで入るから、顔が真っ黒になってしまうからだ。

こんな事を思い出しながら、蒸気機関車を眺めていた。

1日2回の機関車に乗車する事も出来たけど

申し込みをしても、なかなか抽選に当たらないと聞いた。

今はもう蒸気機関車は通っていない。

普段に通るのは電車じゃなく気動車というものらしい。

電車じゃないので空には余計な電線がなく、広く高い空が見える。

何ともすっきりとした風景だ。

線路の向かい側には、山が迫ってきていて

川と道路があるはずなのに見えない位だ。

そして鳥の声がたくさん聞こえる。

駅から少しだけ戻ると国道があるんだけど

車の音もほとんど聞こえない。

もっとも、走っている車自体が少ないんだけどね。

気動車も1時間に1本くらいなんで、時間をしっかりと

見てから駅に行く。

遅れたら1時間待たなくてはならないから。

こんな駅なんで、到着近くになってもアナウンスは入らない。

「ねえ、いつ来るの?」と孫。

「静かにして耳を澄ませていてごらん

 踏切の音が聞こえるよ」

真っすぐの線路のせいか、周りが静かなせいかは分からないけど

汽車の姿は見えなくても、トンネルの向こう、2つ先の

踏切の警報音が聞こえるから近づいてきているのは分かる。

そのうちに、はるか遠くからカンカンカンという

警報音が聞こえてくる。

汽車の姿が見えるまではかなり時間が経ってからだ。

田舎だけど、こんなところが大好きだ。

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