どこだったかは忘れたけれど、露天の岩風呂で足を滑らせて
頭までお湯に潜ってしまって、溺れそうになったことがある。
カニ料理が出るとの情報で、食べる事と温泉が好きなおばさんの
グループ5人で温泉に行ったんだ。
ようやく温泉に着いて、お部屋に行こうとしたら、おばさん3名が
一か所に集まってワイワイしていた。
おいでよの手招きで行くと、ガラスケースの中にホカホカとした
じゃがいもが竹籠に山盛りになっていた。
バターとイカ塩辛が置いてあって、ご自由にどうぞって張り紙。
北海道民は茹でたじゃがいもとイカ塩辛の組み合わせには目がない。
「いやぁ、これでビールがあったら動かないでここに居ても良いよね」
パクパクとジャガイモを食べながら、そこから動く気配がない。
本当にそのまま居つきそうな勢い。
いやいや、それはダメでしょ。
おばさん5人でじゃがいも食べていたら、他の人が近寄れないでしょ。
5人のおばさんって、ビジュアル的には怖い物があるからね。
その温泉は露天風呂がいくつかあって、湯あみ着っていうの?を貸して
くれて、それを着て混浴に入るようになっていた。
おばさんだもの考えることは同じ「男の人はパンツはくの?」って話で
少しだけ盛り上がった。
露天風呂は岩風呂で、段々になっていくつかに分かれていた。
タオル地で出来た薄ピンクの湯あみ着を着て、いざ露天風呂へ。
いくつかお風呂があったら全部に入りたいと思うのは人の常…ではなく
私の好奇心のなすもの。
1ヵ所づつ入って、次は…と足を出した瞬間につるん!
そのまま滑って頭までお湯につかってしまった。
湯あみ着が大きかったせいか、中に空気が入ってプカ~って浮いたような?
お湯は飲まなかったけど、湯あみのプカ~でなかなか足が底に着かない。
横溝正史の小説に近い状態になっていたかと思う。
ようやく足がついたけど、湯あみ着の空気はそのままで、中から空気を
出すのがちょっと大変だった。
ふと見たら、男性が一人、反対側に居た。
よく転んだりする私は、基本的に叫ばないのが常だ。
溺れそうになったのが知られていたか?いや、ここは知られていないし、
私も溺れてはいないと言う事で通そう。
恥ずかしかったけど、何事もなかったかのように
少し温泉に浸ってから友人たちの所に戻った。
どこに行っていたの?と聞かれたけど、多分、溺れそうになった事は
ちゃんと話したと思う。
湯あみ着の下はすっぽんだったけど、布が足に絡んでいたので
中は見えてなかったと思う、多分。
夕食は大食堂で、泊り客全員が一堂に会した。
四角いお皿にズワイガニと思しきものがのっていたが、おばさん5人
「しょっぱいね、身が入ってないよ、写真と違うわ…」とひそひそワイワイ。
それでもビールのグラス片手に賑やかな食事を摂った。
岩風呂に入るときは、十分に気をつけようと思った温泉旅行だった。
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