ある夜
「ヘビだ!ヘビだ!噛まれた!」
夜間の急病外来に男性が数人飛び込んできた
何に噛まれたのか聞くと
「これだ!」
一升瓶の中にヘビが一匹入っていた
どうやって入れたんだろう
それがまずは頭に浮かんだ
噛まれた本人には言えず自分の頭の中だけで思った
さほどヘビを嫌っていないとは言っても
瓶の中で鎌首をあげているヘビなんて
お目にかかった事はない
やれ毒があったら頭が三角だとかやれどうだとか…
それだっってじっくりと観察なんてできない
後になって調べると
アオダイショウにはさほど強い毒はないと書いてあった
けど噛まれた男性を見ると
噛まれたという腕だけが全体に赤黒く酷く腫れている
その腕の方だけがなぜか血圧が異常に高くなっていた
急病外来なので『マムシ血清』は置いてある
けどマムシなのかどうかも分からない
そもそもマムシ血清は使い方が難しい
本体を使うまでには少量をテストして時間をおいて
などと実際に使うまではかなりの時間がかかる
その時はどうやって治療をしたのか思い出せない
それには事情がある
ゴロンゴロンゴロンゴロンって音を立てて
ヘビ入り瓶が床を転がったのだ
付き添いの男性が瓶を蹴飛ばしたようだった
一升瓶と言うのは転がったからと言って
真っすぐにはいかない
転がっては途中でグルグルと回ったりする
中にヘビと言う重しがあるから尚更だろう
ヘビにしてみてもさぞ驚いただろう
ビンを拾って部屋の隅に置いたところ
怒って?鎌首をあげて威嚇してきたもの
あれはどうやったのかさっぱり思い出せない
ちなみにマムシ血清は営林署からの要請で置いたもの
他にそこには置いてなかったけれど
他の病院にはキニーネを一本在庫していた
どうやって治療したんだろう
気になる
少しだけだけど気になる
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